隣の訪問者
ボロアパート住んでいた頃の話です。
ある日の昼下がりのことです。
「ごめんください」と声がしました。
うちにではなく、お隣に訪問者です。
台所で洗い物をしていると、自然と隣の会話が耳に入ってきます。
それぐらいここは壁の薄いボロいアパートです。
「早急に出て行ってもらわないと困るんですよお」
― え、家賃未払い?強制退去? ―
「そう言われてもねえ、こっちも他に行くとこないし・・・」
もめているようで会話がだんだんあらぶってきます。
「ああ、わかりましたよ、出て行きゃいんでしょ、すぐに出て行きますよ。俺はどこへ行けばいいんだよおおおお、わああああああああ!!」
とうとう隣の住人はキレてしまったようでした。
様子を見ようと、窓を少し開けて覗くと、そこには誰もいませんでした。
― そういえば、お隣は空き部屋だったはず・・・ ―
これまでお隣は、せっかく入居してもすぐに出て行ってしまうのでした。
外へ出て見ると、隣のドアにいつの間にか魔除けの御札が貼られていました。
この後、入居した人は長く住んだようです。
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