ポケットに入れたもの
近所の路地裏を歩いていると、白い球を拾いました。
プラスチックのつるつるしたピンポン球です。
友人との約束の時間まで、まだ間があります。
これで壁当てでもして時間潰しようと、無造作にお尻のポケットに入れました。
すると「おーい」と頭の上から声がしました。
屋根の上から、小学生の男の子が見下ろしていました。
ボール拾いにでも登ったのでしょう。
この辺でボール遊びをしてると、よく屋根に引っ掛けるのです。
そうすると塀を伝って屋根に登って、ボールを取りに行くのです。
子供の頃のわたしも何度もそうやって屋根に上っては、ボールを取りに行ったものでした。
わたしは「これ、君の?」とポケットからピンポン球を取り出し、屋根の男の子に向ってかざしました。
なんだかさっきとは触った感じが違っていました。
こちらを見下ろしてる男の子の顔を見ると、片方の眼球がありませんでした。
その瞬間、手に持っていた球がギロッとわたしを睨みました。
わたしはそれを投げ捨てると、猛ダッシュで走りました。
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