ずっと見ていた

洋服を買いに行ったときのこと。

試着しようと商品を持って試着室に向うと、カーテンが閉まっていました。
ときどき、カーテンが不自然に揺れています。
中に先客がいるようです。

わたしがそこで待っていると、「ご試着ですか?」と店員が声をかけてきました。

「ええ」と言うわたしに、「誰もいないようですよ」と店員が視線を下に移しました。
見ると、そこに履き物がありません。
店員が念のため、下から覗き込んだあと、カーテンを開けました。
誰もいませんでした。

わたしは早速、商品を持って、試着室に入り込み、目当ての洋服を着てみました。

鏡に向って正対し、サイズを確認して正面を向きました。
見ると、そこに映っていた顔は、わたしの物ではありませんでした。
それは、わたしと目が合うとニヤリと笑い言いました。

「ずっと見てたよ」

Photo on VisualHunt