路地の向こう

急病で入院した父の見舞いに行ったときのこと。

病院の駐輪場に自転車を止めていると、すぐそばの救急搬送口から入院患者らしきお婆さんと、小さな女の子が出てきました。

「こっちこっち」と女の子がお婆さんの手を引いています。
向う先には小さなスーパーがあります。
孫にお菓子でもねだられているのでしょう

見ていると、ふたりはスーパーには入らず、その脇の路地へと消えていきました。

― 路地の向こうにもお店があるのかな? ―

わたしは気になりながらも、救急搬送口から入院病棟へ向いました。

エレベーターで父が入院している6階に着くと、今しがた息を引き取った人が運び出されるところでした。
わたしと入れ替わりでエレベーターに乗せられていったのは、まさにさっきすれ違ったお婆さんでした。

似ている人かな?と思いつつ、父の待つ病室のドアを開けました。
病室では父が機嫌よさそうにわたしを、待っていました。
「いい部屋くれたわい」と喜ぶ父に、
「そうだね」
と言いながら、窓のカーテンを勢いよく開いてみると、路地を抜けたスーパーの裏側には、
墓地が広がっていました。

そんなはずはないと思いながら、
「一人用の病室で淋しくないの?」と聞くと、父は言った。

「最近ちょくちょく女の子が様子見に来てくれるんだ」