プールの底の風景
小学校のプールの時間。
当時、自由時間になると、潜水してこっそり相手の後ろに近付き、足を取ってひっくり返すというイタズラをしていました。
その日もわたしは水の中に潜っては、次々相手の足を取ってはひっくり返していました。
誰かの足を狙って、プールの底から近づいたとき、違和感を感じました。
その足はプールの底に足が着いていません。
立ち泳ぎにしても足をバタつかせてもいません。
ただ体が真っ直ぐプカプカと水に浮いているのです。
周りはそれぞれ底に足をつけてはしゃいだり、泳いだりしています。
誰もこの異変に気付きません。
顔を見てやろうと思った途端、それは泳ぎだしました。
わたしの上を悠然と背泳ぎしていくそれには、頭がありませんでした。
それがプールの端へ消えていくのを見送ったあと、
わたしはすぐ水からあがって、プールサイドに座り込んでガタガタ震えていました。
そんなわたしをクラスの友人たちが
「唇が紫になってるぞ」と言って笑いました。
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