布団からのぞく足

2020年6月7日

大学時代の合宿でのこと。
わたしたちは山間の温泉ホテルに泊まりました。
ホテルの部屋に入るとみんなで、「オバケの出そうないい部屋だね~」なんて、冗談を言い合ってましたっけ。

飲み会も終わり、寝静まっていた真夜中、わたしはトイレに起きました。
何人か布団から足を出したまま、ぐっすり寝ています。
トイレを済ませたわたしは、足を踏まないように、慎重に避けながら自分の寝床に向いました。

ある部員の足に違和感を感じました。
それは妙に小さな足でした。
よく見ると、明らかに子供の足でした。

よその泊り客の子供が迷い込んだのかな? -

とわたしは思いました。
その足はするすると布団の中に潜り込んでしまいました。
わたしはその掛け布団を上げて、確認しましたが子供などいませんでした。

朝になって、部屋を出ようとするとき、
キャッキャッと子供の騒ぐ声がしました。

「上の階かな?子供が騒ぎよる」
みんながざわついている中、わたしだけが振り返らず、その部屋を後にしました。