絶対事故車
友人が安い中古車を買いました。
「これ絶対事故車やで」
友人が車のドアの内側を手で、さすりながら言いました。
そこには血痕のようなものが付いていました。
ある日、ある交差点で信号待ちしている時に、車内を覗き込んでくる少年がいました。
それは小4ぐらいの少年でした。
少年はしきりに運転席を覗き込んで聞いてきます。
「おばちゃんは?おばちゃんは?」
― 何だこのガキ? ―
友人は知らんふりをしていました。
「おっちゃん、とぼけても無駄やで」
少年は車内を指差して言いました。
「それ、ぼくの血やから」
その瞬間友人は、数年前に子供を轢いた後、病院に運びふりをして山中に遺棄した事件を思い出しました。
友人はスピードをあげてそこから離れました。
「次は逃がさんからなあ、あほー」
少年が背後で、そんなことを叫んだ気がしました。
― 人違いで、とり憑かれたら堪らん ―
後日、夜遅くにその交差点を見ると、黄色い点滅の信号機の下に人影がたっているのが見えたので、さすがに遠回りして帰ったそうです。
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