深夜残業
それは資料の整理を頼まれて、夜遅くまで一人で残業していたときの事です。
その部屋の壁面には黒くすすけた部分があり、いつも不思議に思っていました。
ついうとうとして顔を上げると、日付も変わって夜半の1時を過ぎていました。
見ると積み上げられた資料の山越しに、人の頭が動いているのが見えました。
いつの間にやら向いのデスクで作業をしているようです。
「お疲れ様です」と声をかけたが、反応がありません。作業に集中しているようで、せわしく頭が左右に動いているのが見えました。
しばらくした頃に、
「喉かわきませんか?自販機行って何か飲み物でも買ってきましょうか?」
そう言って立ち上がって資料越しに向かいを覗き込みました。
そこには黒くて丸いものだけがフワフワ浮いているだけでした。
― 風船かな? ―
そう思って見ていると、
それがゆっくりわたしを見上げました。真っ黒な中に目鼻が見て取れました。
それがニヤッと笑ったかと思うと、こちらに向って飛んできました。
― うぉっ! ―
わたしは慌ててのけぞって、それを避けました。
わたしは椅子に足をとられ転倒していました。
気付くと、あの真っ黒な生首はどこにもありません。
ただ、わたしの頭上の壁面に黒いすすの部分がありました。
なぜそこにすすけた部分があったのか、わかった気がしました。
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