入り江の人影

大学生の頃、サークルの合宿を兼ねて、ある海辺の観光地へ出かけた時のこと。

わたしたちは、潮風に当たりながら海岸沿いを散歩していました。

途中、通りかかった入り江に数人の人影がありました。

― 潮干狩りでもしているのかな? ―

見るとお年寄りばかりです。

― 老人会の慰安旅行かな? ―

しかし服装を見ると、団体旅行者のものではありません。

ステテコ姿の人もいれば、浴衣姿の人もいれば、割烹着姿のお婆さんの姿も見えます。

服を着たまま、腰のあたりまで海水に浸かっている人もいます。

彼らは会話もなく黙々と、何かを探していました。

そこを通り過ぎて間もなく、一旦ホテルに戻ろうという話になり振り返ると、さっきまでの老人たちの姿は忽然と消えていました。

ホテルに戻ると、留守番していた仲間が、西側の入り江には近付かないほうがいいと言うのです。

そこはかつて女の人のバラバラ死体が発見された現場で、

いくつかの部位が発見されないまま、遺体の捜索は打ち切られていました。

それ以来、あの辺では霊が目撃されるのだそうです。

もしかしたらお爺さんやお婆さん曽祖父さんたちの霊があの世から、孫のまだ見つかっていない部位を探しにきているのかもしれません。