ローカル線での出来事
ある田舎のローカル線に乗ったときのこと。
乗客がまばらの電車内でわたしは居眠りをしていました。
しばらくうつらうつらして顔を上げると、いつの間にか人が乗り込んでいました。
前の座席から会話が聞こえます。
陽気なおばさん連中です。
後ろの座席からも賑やかなおばさんの話し声が聞こえてきます。
― 慰安旅行だろうか? ―
「どちらへ行かれるんですか?」
前の座席の隙間からおばさんがこちらを、覗き込んで聞いてきました。
「ちょっとした一人旅です」とわたしが答えると、
「いいですねー、わたしたちは孫の顔を見てきて、戻るところなんですよ」とその目が笑いました。
― なるほど、離れて生活する息子夫婦のところからの帰りなのか ―
「みんな、もうすぐ着くよー」と声がかかりました。
電車はトンネルに入っていきました。
トンネルを抜けると、とたんに静かになりました。
さっきまでの喧騒がすっかり消えていました。
驚いたわたしは立ち上がって見回すと、前の座席も後ろの座席も人がいなくなっていました。
車内から、遠ざかっていくトンネルを見ました。
そのトンネルの上には大きな墓地が広がっていました。
それはお盆の日の出来事でした。
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