知らない大人たち
小3の時、父親と行った旅先での話。
ホテルにチェックインして一息ついてから、わたしは缶ジュースを買おうと部屋を出た。
案内人に教えてもらった自販機コーナーをめざした。
そこでジュースを買い、部屋へ戻ろうとしたら自分の部屋がわからなくなった。
通りかかった従業員に声を掛けた。
「部屋の名前わかる?」
「松の間」
「フロントの近くやね。フロントの場所から、自分でいける?」
その時に、フロント横の階段を上がってすぐのところだと思い出した。
「行ける!」
フロントの場所を教えてもらい、そこから自分の部屋へ真っ直ぐ向った。
『松の間』という表札を確認してドアを開けると、知らない大人たちがいた。
大人たちはみな笑顔でわたしに部屋に入るよう促した。
わたしはドアを閉めた。
わたしは『松の間』という表札を見上げながら、
― 部屋違ったっけかな? ―
と思いながら、フロントに戻ってその前のソファーに座り、もう一度よく考えてみた。
しばらくして、やっぱり間違っていないと、もう一度その部屋へ行ってみることにした。
『松の間』という表札を確認してドアを開けると、父が何事もなかったようにタバコをくゆらせてテレビを見ていた。
子供の頃の白浜のホテルでの実体験である。
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