フライの練習

ある晩、カーテンを締めようとしたとき。

自宅マンションの前のグランドに、人影があるのに気付きました。

ひとりでボールを真上に投げては、キャッチをしていました。

フライを捕る練習をしているようです。

「よーし、今度はもっと高くいくぞー、高い高ーい」

などと叫んでいる声が聞こえてきます。

そこは沿道の街灯ぐらいしか明かりがないところです。

― あんな暗い中で、よく捕れるなあ ―

カーテンを締めて、寝ようとすると

― ドン ―

窓に何か当たる音がしました。

カーテンの隙間から外を見ると、さっきのグランドの人影がこちらに向ってジッと正視していました。

どうやらボールを逸らして、窓にぶつけてしまったようです。

わたしは「いいよ」という意味で軽く手を上げ、カーテンを締めて眠りにつきました。

朝になって、カーテンを全開にしてみると、窓ガラスに白い痕がついていました。

― 昨夜ボールが当たった痕か ―

よく見るとそれは、赤ん坊の手形でした。