後から登ってくるもの
唐突にAが山へ行こうと言い出した。
強引に連れ出される形でAの車に乗り込み山へ向った。
メンバーは昼下がりに、大学の部室でたむろしていた私とAとBの三人だ。
駐車場に車を残して、私たちは山道を登り始めた。
途中岩場に差し掛かった。
急斜面な岩肌のところだ。
― こんなとこ登るって聞いてないぞ ―
なんて思いながらも、ここまで来たら意地でも登ってやるという気持ちにもなっていた。
上を見るとAが軽快に登っている。
下を見るとBがきつそうに登ってついてくる。
体格的にはAはがっちりした体型で、Bは背も低く痩せ型のメガネ。
私はAには及ばないにしても、Bにだけは負けたくなかった。
しばらくして見下ろすと、Bがすぐそばまで迫っていた。
― いつの間に!? ―
Bはしんどそうにしながら、手を伸ばして私の足を掴もうとしてくる。
― 私に掴まって休もうというのか? ―
私はBに追いつかれまいと急いで登った。
登り切るとAが余裕綽々で待っていた。
振り返るとBが見えない。
「あいつ途中で引き返したな」とAが笑いながら言った。
私たちはしばらく景観を堪能して下山した。
駐車場に戻ってくると、Bが車にもたれかかって待っていた。
「もうちょっとで登りきれたのに、何で降りてんだよ」と言う私に、
「何いってるんだ、俺は最初からここにいる。斜面見た瞬間に無理だなって思ったから・・・これだぞ」
とAは足元を指した。
見ると彼はサンダルを履いていた。
私の後を登ってたのは誰だったんだ?もし足を掴まれていたら・・・と思うと。
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