絶対事故車

2020年6月7日

友人が安い中古車を買いました。

「これ絶対事故車やで」

友人が車のドアの内側を手で、さすりながら言いました。

そこには血痕のようなものが付いていました。

ある日、ある交差点で信号待ちしている時に、車内を覗き込んでくる少年がいました。

それは小4ぐらいの少年でした。

少年はしきりに運転席を覗き込んで聞いてきます。

「おばちゃんは?おばちゃんは?」

― 何だこのガキ? ―

友人は知らんふりをしていました。

「おっちゃん、とぼけても無駄やで」

少年は車内を指差して言いました。

「それ、ぼくの血やから」

その瞬間友人は、数年前に子供を轢いた後、病院に運びふりをして山中に遺棄した事件を思い出しました。

友人はスピードをあげてそこから離れました。

「次は逃がさんからなあ、あほー」

少年が背後で、そんなことを叫んだ気がしました。

― 人違いで、とり憑かれたら堪らん ―

後日、夜遅くにその交差点を見ると、黄色い点滅の信号機の下に人影がたっているのが見えたので、さすがに遠回りして帰ったそうです。