民宿の壁
それは大学のサークル合宿で古ぼけた民宿に泊まったときのことです。
わたしたちが泊まった部屋は壁の一部が崩れており、お世辞にもいい部屋とはいえないところでした。
女性の首吊りがあったと噂のある民宿だったこともあり、壁の崩れのことを「首吊りしたら丁度足が当たるところだな」なんて冗談ぽく言う人もいました。
わたしの寝床は、ちょうどその壁の崩れた部分が頭の上にくる場所になりました。
時折、そこからすきま風がスースーと吹き込んでくるわ、首吊りの人が壊したんじゃないかというさっきの話を思い出したりで寝つけないでいました。
みんなが寝静まった頃、わたしは上半身を壁にもたれかけて、ぼんやりとしていました。
― パシャ! ―
いきなりフラッシュが焚かれました。
見ると、部屋の奥でやはり寝付けないでいた友人がカメラを構えてイタズラぽく笑っていました。
合宿を終えた数日後、
友人が「おい、これ・・・」とわたしに一枚の写真を見せてきました。
それは夜中に撮ったあの時の写真でした。
見ると、左斜めの角度から撮られたその写真は、壁の崩れた部分が女の顔になっていました。
それはどう見ても女の生首が、私を見下ろして笑っているまさに心霊写真でした。
「ところで」
と友人は続けました。
「俺が寝てる間に、誰が俺のカメラ持ち出して撮ったんだ?」
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