エレベーターのボタン
よく心霊体験をするAの話です。
それは小学生のときに、12階建ての集合住宅に住む友人のところへ遊びに行ったときの事。
ボードゲームで遊んでいると、窓の外に何かが落ちていくのが見えました。
Aは人影に見えたので、
「人が落ちた」
と叫びました。
友人とベランダに飛び出し、階下を見たのですが何もありません。
鳥と見間違えたのだろうということでその場はおさまりました。
しかし鳥にしては大きすぎるとAは納得していませんでした。
― ここに長くいてはいけない ―
幾度か心霊体験をしているAの霊感が騒ぎました。
Aは用事を思い出したと言って帰ることにしました。
上階からエレベーターが降りてきました。
エレベーターに乗り込んで階を押そうと見ると、全てのボタンが押されていました。
「こんな時に!」
誰かのイタズラと思ったのですが、その時におかしな事に気付きました。
― 5階のボタンまで押されてある ―
ここは4階です。
ここのエレベーターは、5階のボタンまで押そうと思ったら、扉が閉まって5階から動き出してから押さなければなりません。
エレベーターの中には誰もいないのです。
Aは慌ててエレベーターから飛び出すと、階段を駆け下りて帰りました。
その友人のところに遊びに行ったのはそれ一度きりだそうです。
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