半開きの襖
引越したばかりの友人が、また引越すと言い出しました。
押入れの襖が閉まり切らないのだそうです。
冬場はそこから冷たい風が流れ込んできて、どうにも寒いのだそうです。
― また引越しの手伝いに借り出されるのか? ―
それが嫌だったわたしは、とりあえず見に行くことにしました。
確かに、何かが引っかかっているわけでもない。
なのにあと10センチのところで閉まりませんでした。
― 建物自体が傾いてるのかなあ? ―
友人は襖の反対側に手をかけて、思い切り力を込めて閉めようとしました。
襖がガタガタするだけで閉まりません。
見ると、襖の上のほうに、押入れの中から何者かが襖が閉まらないよう、抵抗している手が見えました。
友人は汗だくになってハァ、ハァ言いながら、わたしに向き直って
「な、閉まらないだろ?」
その時、押入れの中から、長い乱れた髪が覗くのが見えました。
その長い髪も汗だくになって、ハァ、ハァしている様子でした。
それを見ながら、わたしは友人に言いました。
「すぐに出たほうがいいな」
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