地下浴場
ある東北の観光ホテルに泊まったときのこと。
そのホテルは大浴場が、地下浴場と展望台大浴場があるところでした。
わたしは静かにのんびりしたかったので、混んでいないと予想した地下浴場へ行きました。
脱衣所には誰もいませんでした。
が、浴場の中からわいわいと子供たちの騒ぐ声がします。
― しまった、子供の貸切状態なのか? ―
しかし、浴場の中に入ってみると誰もいません。
騒がしい声もピタッとやみました。
― 隣の女風呂から聞こえてたのかな? ―
とわたしは思い、これ幸いと湯船にゆったりと浸かっていました。
湯船に浸かりながら反転して見ると、そこは壁一面の大鏡になっていました。
その大鏡の中には、何人もの子供達が湯船に浸かるわたしを取り囲んで、ジッと見つめている様子が映っていました。
わたしは驚いて、すぐに脱衣所へ逃げ込みました。
するとまた、浴場から子供達がはしゃぐ声が響きました。
わたしは着替えもそこそこに地下浴場を飛び出し、展望台大浴場へ向いました。
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