セミをゾンビ化増殖させる『マッソスポラ菌』は日本でも確認されている
蘇った死者が次々と人を襲う。襲われた人もまた動く死者となり、新たに人を襲う。そんなゾンビ映画のような恐ろしい世界が、セミの世界では、現実にあるという。
マッソスポラ菌は、セミに感染するハエカビ目ハエカビ科の真菌病原体である。現在12種確認されているが、それぞれ特定のセミのオスにしか感染しないことが分かっている。
この菌に感染されたセミは、その生殖器や腹部を消しゴムのように削り取られ、やがて菌の胞子に入れ替わられる。
菌にはマジックマッシュルームと同じ幻覚作用成分があり、宿主に幻覚を見せることによってその体を操るというのだ。
感染したセミは体の三分の一が欠落しているにも関わらず、何事もないように活動し、さらに感染を広げていく。
感染手段は、移動中にシャワーのように振りまく以外にも、他のセミとの生殖行為によるものがある。
セミのオスは鳴くことによって求愛行動を起こし、それに対してメスが羽を羽ばたかせOKサインを出すもので、決してオスが羽ばたかせることはないのだが、感染したオスがメスのように羽を揺らし、健康なオスをも誘惑するという。
十数年もの間、地中で過ごした後、ようやく地表で送る輝かしいはずの時間を、マッソスポラ菌に奪われるとは、なんとも痛ましい話である。
これは外国だけの話ではない。1951年都内、1999年小笠原と日本においても確認されているのだ。
「感染するのは特定のセミのオスだけで、人間には感染しない。」
とは言え、将来、狂犬病やラッサ熱、エボラ出血熱などのように動物を介することで変異し、人間への感染能力を持ってしまわないのか?という一抹の不安もある。
そうならないことを切に願う。
なお、マッソスポラ菌の持つ「シロシビン」「カチノン」という覚せい剤成分はキノコ以外から検出されたのは初で、麻酔や向精神薬として、人への有効活用に向けて研究が行われている。
画像引用元:wikipedia