【創作怪談】割れたお守り

半年前、京都にある古い神社を訪れたときのことだ。

境内の隅にある小さな授与所で、僕は「身代わり守り」という木製のお守りを見つけた。

普通のお守りより少し大きく、薄い木の札が小さな木枠にはめ込まれている。

説明書きには、こう書かれていた。

「持ち主に降りかかる災いを、身代わりとなって受けてくれるお守りです」

交通事故や病気、悪い出来事などから守ってくれるものなのだろう。

特に深く考えず、僕はそのお守りを買った。

それから半年間、スマートフォンのケースにストラップとして付けて持ち歩いていた。

異変が起きたのは、先週のことだった。


深夜に聞こえた「パチン」という音

その日の夜。

時刻は午前2時を過ぎていた。

僕は自分の部屋で、パソコンを使って作業をしていた。

部屋は静かで、聞こえるのはパソコンのファンが回る音くらいだった。

そのとき。

パチン。

突然、硬いものが割れるような音が部屋に響いた。

「……何?」

机の周りを見たが、何かが落ちた様子はない。

そして、机の横に置いていたスマートフォンを見て、僕は手を止めた。

ケースに付けていた身代わり守りの木枠が、真ん中からきれいに真っ二つに割れていた。

スマホを落としたわけではない。

どこかにぶつけた覚えもない。

それなのに、お守りだけが突然割れていた。

少し気味が悪かったが、僕はすぐに別のことを考えた。

「もしかして、何か悪いことから守ってくれたのかもしれない」

身代わり守りなのだから、持ち主の代わりに何かを受けて壊れることもあるのだろう。

そう考えると、むしろありがたいことのように思えた。

僕は割れたお守りを小さな箱に入れ、机の引き出しの奥にしまった。

神社へ返しに行こうとは、そのときは思わなかった。

そして、その日の夜からだった。

毎晩、同じ女の夢を見るようになったのは。


枕元に立つ女

夢の中で、僕は自分のベッドに寝ている。

部屋の様子も、現実とほとんど変わらない。

ただ、部屋の中が異常なほど暗い。

そして毎回、枕元に見知らぬ女が立っている。

長い黒髪。

白っぽい顔。

年齢はよく分からない。

女は何も言わない。

ただ、顔をひどく歪めながら、僕の顔をじっと覗き込んでいる。

逃げようとしても、体が動かない。

声を出そうとしても、喉が動かない。

そして女の顔が少しずつ近づいてきたところで、僕は目を覚ます。

ところが、目を覚ましても体は動かなかった。

金縛りだった。

指一本動かすことができない。

そんな状態で暗い部屋に横たわっていると、どこからともなく音が聞こえてくる。

カチ……。

カチ……。

木と木がこすれ合うような、小さな音だった。

最初は家の柱が鳴っているだけだと思った。

古い家では、温度の変化で木材が音を立てることがある。

そう自分に言い聞かせた。

しかし、その音は毎晩聞こえた。

しかも音がする場所は、いつも同じだった。

割れたお守りをしまった、机の引き出し。


体調までおかしくなった

数日すると、夢だけでは済まなくなった。

急に高い熱が出るようになった。

病院へ行っても、はっきりした原因は分からない。

薬を飲むと一時的に熱は下がる。

しかし夜になると、また体が熱くなる。

そして眠れば、あの女が現れる。

日に日に女の顔は近づいてきた。

最初は枕元に立っているだけだった。

次の日には、僕の顔を覗き込んでいた。

その次の日には、僕の耳元まで顔を近づけていた。

そして昨日の夢では――

女の髪が、僕の顔に触れていた。

さすがに普通ではないと思った。

そこで僕は、割れた身代わり守りについて調べることにした。


「身代わり守り 割れた 後」

僕はスマートフォンで検索した。

検索欄に入力した言葉は、

「身代わり守り 割れた 後」

だった。

神社の公式サイトや掲示板、古いブログ、オカルト系の掲示板などがいくつも表示された。

その中に、一つだけ妙な書き込みがあった。

タイトルは、

【警告:某神社の身代わり守りについて】

だった。

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